中朝露3カ国の国境が見渡せる防川展望台(中国吉林省琿春)
琿春は、中国吉林省の最東端に位置する都市で、ロシアと北朝鮮の2か国と国境を接しています。…
琿春は、中国吉林省の最東端に位置する都市で、ロシアと北朝鮮の2か国と国境を接しています。
長白山(白頭山)の麓近くから中国と北朝鮮を隔てて流れる図們江が日本海に流れ着く先に、「朝ロ友好橋」(中国名「朝俄大橋」*「俄」はロシアの意味)と呼ばれる鉄橋があります。中国からみてこの朝俄大橋の手前までが中国領で、3か国のうち、中国だけが海に面していません。ところが、この場所に展望台をつくって、観光客がのんびり見物にやってくるほどの経済力を有しているのは中国だけです。そのアンバランスさゆえに、中国がどんなにこの地に港湾施設を手に入れたいとしても、ロシアと北朝朝がそれを牽制するという構図もあり、1990年代からかけ声だけは盛んに唱えられていた図們江開発は、いまもなお停滞しています。
ともあれ、3カ国の国境が接する場所は珍しいため(東南アジアにタイ、ラオス、ミャンマーが接するゴールデントライアングルがあります)、吉林省延辺朝鮮族自治州を訪ねた人は、たいてい1日かけて防川展望台まで足を延ばします。
以下、延吉から琿春市街地をへて防川展望台へ。帰り道にロシアに向かう陸路のイミグレーションの琿春口岸を訪ねるドライブコースを紹介しようと思います。
早朝延吉を出て、高速道路ではなく、図們江を横目に見ながら旧道を走るほうが面白いです。朝食をとるため、ドライブインに立ち寄ると、北朝鮮から荷物を運ぶトラックが駐車していました。北朝鮮のトラック運転手たちが朝飯をかきこんでいます。彼らは犬肉のチゲ定食を食べていました。
そこから先は一本道をひたすら走ります。途中道路の左側にロシアとの国境を示す鉄条網が見えます。約20分走ると、防川展望台に着きます。
空が広く、とてものどかな場所です。国境らしさを感じさせるのは、政府が立てた国防の標語を書いた大きな看板くらいでしょうか。土産物屋もあります。
展望台に上がると、中国、北朝鮮、ロシアの3か国が国境を接するポイントが見えました。望遠レンズを使うと鉄橋の写真もかなり大きく撮れます。
北朝鮮領は図們江の向こう側(西側)で遠く離れているためよく見えませんが、手前から左手(東側)に広がるロシア領はよく見えます。鉄道の線路や国境防衛の施設らしき建物も見えます。
この展望台の少し南にある中国領のボーダーから日本海までは約16㎞だそうです。そのせいか、近くにカモメが飛んできました。展望台では中国の観光客が記念撮影を楽しんでいました。
※坊川展望台を最後に訪ねたのは、2012年のことでした。ここまで書いて失望させてしまうのは恐縮ですが、2014年頃からこの国境は外国人の立ち入り禁止になりました。中朝国境は現在の中国からみてとても敏感な地域で、何か不測の時代が起きたとき(たとえば、脱北者や北朝鮮から脱北者を探しに密入国してくる公安と遭遇するなど)、外国人がその場に居合わせたり、巻き込まれたりしたら、世界的なニュースになってしまい、そのような国境管理の不手際を中国側の軍関係者や公安は見せたくないからでしょう。
現地関係者は以下のコメントを寄せてくれています。「(2016年)10月18日から琿春高速鉄道駅から防川風景区までのバスが開通されました。途中に圏河税関など数ヵ所にバス停もでき、移動時間は片道1時間30分で15元です。ただし、圏河税関付近に国境警備の検問所が設置されていて、北朝鮮情勢により外国人は通過できずその場で戻される場合もありますので、訪問際には事前にお問い合わせください」。
一方、中国国内客向けには開放されています。現在の防川国境には、冒頭の写真には写っていない、古代中国を思わせる巨大な展望塔が2014年に建てられ、観光地としてにぎわっています。
というわけで、現在日本人は坊川展望台には行けませんが、その手前に北朝鮮に入国する圏河税関があり、これを見ることはできます。北朝鮮の羅先経済特区へのゲートウェイです。中国からは車やバスで橋を渡って入国します。
また琿春の市街地の東端には、ロシアへのイミグレーションである琿春口岸があります。周辺にはロシアからの観光客を乗せたバスが並んでいます。延吉を起点にこれらを車で訪ねて回ると、だいたい1日のドライブコースになります。
※さらに詳しい内容はこちらのブログ記事参照。